9e2ce49d.jpg僕は池袋から渋谷方面に向かう山手線に乗っていた。
運良く座席に座ることができ、僕は本を開いていた。

やがて、高田馬場から乗ってきたひとりの男性が僕の目の前に立った。
僕は一瞬本から目を離し、彼の姿を見た。

クセがかった髪、眉と目が細く、頬骨が少し出ている。
ブルーのシャツと黒のスリム・ジーンズ。20代後半と思しい、ごく普通の男性だ。
ただ一点、つり革を掴む右手の人差し指の爪だけが長く、
なぜかその指にだけピンク色のマニキュアが塗られていた。続きを読む