2006年度卒業予定の大学・大学院生に対する民間企業の求人総数が
約70万人と、バブル期に迫る水準に達しているという。

その要員として
1. 景気回復(本当か?)による企業の求人意欲の活発化
2. 個人情報保護法の施行などで、非正規社員では置き換えられない人材需要が発生
3. 団塊の世代の大量退職がはじまること(2007年問題)への早期対応
などがあげられている。

ちなみに、大量採用への布石はすでに
今年度からもはじまっている。

詳しいことは長くなるので省くが、学生の視線が大手企業に集中し、
中小企業にまったく学生が集まってこないことが、
今年の採用戦線の大まかな傾向である。

一頃前は、学生の二極化(内定が取れる、取れない)が叫ばれていたが
ここにきて企業も二極化(学生が集まる、集まらない)の傾向が強くなっている。
それでも大手企業はマンパワーもあるし、お金もそこそこ使えるので
その気になればある程度の学生を集めることは可能だ。

しかし中小企業になってくると、人はいないわお金もないわで
「この状況で学生集めろといっても、会社は金出してくれないし
上司は『金がないなら知恵を出せ』しか言わないし、どーせえっちゅうねん!!」
という人事担当者の愚痴があちこちから聞こえてきそうである。

(と、いうか聞こえている。一応、そういう業界で仕事をしているので。
そして彼らは我々に対して『なけなしの金払っているんだから、
学生集めるために何とかしろや!!』と息巻くのである。やれやれ、因果な商売だ)

ついでに私見を言わせていただければ、
人を集めるのに知恵などいらない。必要なのは、やはり金である。
知恵なんぞ人が集まれば自然に涌いてくる。
しかし、金がなければ人を集めることもできない。
そのことに気がついている企業トップは、たぶん、意外と少ない。

ともかく、企業の人事というのはどれだけ学生が集まったかだけで評価される、
非常に可愛そうな職種である。それでいて、社内の風当たりも強い
(え?セミナーに人出せ?こっちも忙しいんだよ。そっちでどうにかしろよ。
大体オマエら、採用活動意外に仕事やってんの?ちったあ良い社員入れろよ。
いつもいつも使えねえヤツばかり採りやがって……云々)
ので、まあ同情しなくもないのだが。

つまり何が言いたいかというと、企業の人事の人たちも我々と同じように
何かと苦労しながら仕事をしているわけである。

しかし、本当に言いたかったことはこのようなことではない。

以下、僕の上司から聞いた話。

1年前だか2年前の日本経済新聞の第2部に
作家・村上龍氏のインタビューが掲載された。
ちょうど氏が「13歳のハローワーク」を出版した直後だか
もう少し後だかのことだった。

このインタビューの企画を持ち出したのは
僕が仕事をしている会社の営業マンらしい(違うかもしれない)。
正面から取材を依頼してもマトモに相手をしてくれないだろうと
日本経済新聞社から働きかけてもらって、まあ二転三転して
いろいろ難しかったそうだが、ともかく村上氏は取材に応じてくれることになった。

一体誰がインタビュアーを務めたのかは知らないが
たぶん、日経の「エライ」誰かなのだろう。もしくは、それに準ずる
「その道のプロ」であるライターかもしれない。

ともかく、インタビューはこの質問ではじまったという。

「学生に対して、就職活動のアドバイスをするとしたら何ですか?」

村上「俺は就職なんかしたことないんだから、そんなことわかるわけないだろう」

ごもっとも。村上氏は100%正しい。何も間違ってはいない。
その後どのような取材がされたのかは詳しく聞いていないが、
ともあれそのインタビュー記事は、多少ねつ造され(たらしい)て掲載された。

僕が日経(あるいは、その子会社)と仕事をしていて思うことがある。
つまり“日経はサラリーマンをたくさんつくりたい”のだろう。

就職活動中のみなさん、あるいはこれから就職活動をはじめるみなさん、
日本経済新聞社は、少なくとも僕にとってはそういう会社です。

がんばってください。