練馬の氷川台に引っ越して2カ月が経つ。
それまで住んでいた場所が桜台というところで
路線は変わるけれど、まあほとんど近所だし
生活の面では大した変化はないだろう……と軽く考えていたのだが
はっきりいって甘かった。

たかだか数百メートルしか離れていない土地なのに
あまりにも雰囲気というか環境が違っていて、極端な話
「ここは本当に東京なのか?」というくらいのんびりとしている。
まあ、もともと畑だった場所だし、僕はそういう環境のなかで育っているから
それについては別にどうこういうことはないのだけど。

それよりも今の僕を悩ませている問題がある。
最寄り駅が東京メトロのため、通勤だとか休日に関係なく
当然どこへ行くにも地下鉄を利用することになる。

で、いったい何が問題なのかというと
“景色が見られないことがこんなに辛いとは思わなかった”
ということである。

当たり前だけど、地下鉄は地下を走る。
景色はずっと暗い壁で、車内は薄暗く、空気がこもっている。
そして朝だろうが夜だろうが景色(ただの壁なので景色とは呼べないけれど)
が変わらない。地上を走る電車であれば、朝は太陽の光があって
夜は街の光がある(あるいは、闇がある)。
雨が降れば水滴が窓を叩くし、風が吹けば木々が揺れる。

以前は通勤でも休日でも池袋で乗り換えていたから
あまり気にしていなかったけれど、乗り換えで地下鉄を利用するのと
地下鉄が最寄り駅になるのでは、クーラーボックスで冷やされたコーラと
炎天下のグラウンドに放置されたコーラくらいの差があると思う。

べつにそんなのいいじゃないか。
電車なんて、所詮ただの移動手段としての箱なんだから。
それはそれで正しい見解だと思う。
地下鉄なんてそういうものだといってしまえばそれまでだしね。

でもね、なんというかやっぱり人間は闇のなかでは生きていけないのである。
地下にもぐっていたのでは、たとえ蛙が降っても気づかないだろう。
(そりゃ、なかには地下でしか生きられない人だっているだろうけど)

そんなわけで景色が見られない(というか、光がない)憂鬱を
ずっと引きずっている僕です。なんだか引っ越してから体が重い気がするのは
きっと精神的なものだと思います。仕事も基本的には内勤だし。
もっと光を! しくしく。