「中小企業へ職場メンタルヘルスの支援を届ける」。上江誠さんは、そんな理念を掲げて2015年1月に社会保険労務士として独立した。「独立を決意したきっかけは、前職で先輩がメンタル不調になったこと」と言う上江さん。そんな上江さんに、独立までの道のりや、現在の心境などをお聞きした。

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Hand in Handコンサルティング 社会保険労務士事務所
代表 上江 誠(かみえ・まこと)さん


小さな職場のメンタルヘルスを解決したい

――上江さんは「職場のメンタルヘルス」を支援する専門家とお聞きしました。
 社会保険労務士(以下、社労士)の主な仕事は、企業における入退職など、人材の動きにかかわる手続きを行うことです。大手企業は総務部や人事部に社労士資格を持った社員がいるケースが多く、ほとんど社内で賄うことができるため、国内の企業で社労士契約を結んでいるのは中小企業が中心です。そこで私を選んでいただくためには、私自身の強み、軸を打ち出す必要があります。私の場合は、それが職場メンタルヘルスのサポートです。
 私が独立を決意したきっかけは、前職で職場の先輩がメンタル不調になってしまったこと。私も含めて職場の仲間も気を使うようになり、職場全体の士気も下がりました。大企業であれば資源がありますが、中小企業ではそんな資源を持っていない。そこで何かできることはないかと、中小企業向けにメンタルヘルスを行っているサービスや情報を探しました。
 しかし私がほしいと願う情報は得られず、外から支援するサービスがあったらいいのに、と考えるようになりました。やがて残念なことに、先輩は欠勤がちになり、退職されてしまったのです。このとき、「資源や情報が乏しい中小企業には、職場のメンタルヘルスをケアする専門家のサービスが絶対に必要だ。世の中にそのサービスが存在しないのなら、自分がそれを提供する存在になる」と、起業を決意したのです。
 起業準備期間中にメンタルヘルスに関する資格を取得し、専門知識も学びました。何より私の強みは、自身の経験を交えての適切なアドバイスや支援ができることだと思っています。

支払いも、手続きも、すべて自分でやっていく

――独立して1カ月。どのような心境でしょうか。
 この1カ月はあっという間でした。独立後も、保険や年金、税金など、いろいろな手続きが必要で、それらの処理に追われていたのが正直なところです。これまでは会社が行ってくれましたが、自分でやることがこんなに大変とは思いませんでした。商工会議所や社労士会(全国社会保険労務士連合会)に足を運んだり、先輩の社労士の方にご挨拶に行ったりと、仕事よりも、そんな時間が長かったですね。
 営業開始したのが1月5日。その日は期待感と高揚感に満ちていました。ところが翌日事務所に入ると、「そうか、これからは周りに誰もいない。自分一人でやっていかなければならないんだ……」と、今まで味わったことのない孤独を感じました。会社員時代は朝出社すると、オフィスには誰かがいて「おはよう」と挨拶をしてくれる。声をかけてくれる人がいることが、こんなにうれしいと思いませんでした。人がいることの有難味と温かみがわかりました。
 仕事については非常にありがたいことに、前職の会社と顧問契約を結ぶことができました。私たちの仕事は紹介から入ることがほとんどで、通常はスポット案件をいただき、いくつか実績ができた後に顧問契約につながるケースが多いのです。
 今は積極的に外に出て、人に会うようにしています。人と接することで、今自分が何をすべきかが整理できたり、アイデアのヒントをもらえることもあります。自分が独立した話をすると、「じゃあこの人を紹介しょうか」と、言ってくださる方もいらっしゃいました。うれしいことに、顧問契約につながるかもしれないお話やセミナーのご相談もいただいています。事務所にこもっていても何も生まれない。人とのつながりが仕事を生むと感じています。

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「一人の事務所にもだいぶ慣れました(笑)」

――会社員時代と比べて何が変わりましたか?
 まず何より、コスト意識が変わりましたね。資料をプリントするだけでも、カラーは1枚いくら、モノクロはいくら、などと計算してしまう。会社にいたころはコピー代なんて考えたこともなかった。
 自分宛てに送られてきた事務所家賃の請求書を見ても、会社員時代との違いを感じました。「そうか、これからは自分がこれを毎月支払っていくんだ」と。告白すると、その請求書が怖くなってデスクの隅に避けてしまったんです。見て見ぬふりですね。これからは自分で支払わなければならない現実に直面して、気持ちが沈みました。
 何を言っているんだ、そんなの当たり前だろうと思われるでしょうが、そんな現実が直視できなかったのです。でも現実にはそこに請求書があって支払わなければならない。コピー紙やインクも、なくなったら買わなくてはならない。意を決して家賃を払いました。それも、ある意味腹をくくった瞬間といえますね。すべては自分で決めたことですから、いまは前向きに考えて、そういう些細なことも含めてこれからは楽しんでいこうという気持ちになっています。

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オフィス入り口の打ち合わせスペース。

家族の理解と仲間の応援が起業準備を後押し

――起業準備はどのようにして進めたのですか?
 まず、独立するタイミングを2015年1月と定めました。時期が決まれば、そこから逆算してどう動くべきかがはっきりします。長い時間をかけてもモチベーションが続くかもわからなかったので、2014年を準備期間として、きっちり1年で独立すると決めたのです。
 真っ先に行ったのは、妻の理解を得ることです。特にご家族を持たれていて独立を目指す方にとっては、これが最も大切だと思います。家族の理解を得られない状態で活動をしても、どこか心にブレーキがかかってしまう。私も、何よりも最初に妻に思いを伝え、理解を得ました。
 家族の理解を得られれば、あとは行動するのみです。まず私は、事業を展開するに必要な「ヒト・モノ・カネ」を、それぞれの軸で整理しました。例えば「ヒト」であれば、1年間に500人に会う、「モノ」はホームページや事務所などの基盤づくり、「カネ」は融資の相談を受ける、といったように、それぞれに必要な事項を書きだして整理したのです。
 私はこれらのことをPowerPointに記録し、2カ月に一度、その期間にできたこと、できなかったことを振り返るとともに、先の計画を立てていきました。ときには「これはもう止めた」と、切り捨てたこともあります。その時々で、最優先でやるべきことを見極め、集中して活動していました。一方、起業独立に関する本を読んだり、起業スクールを探すといった情報収集も行い、さまざまな角度からアプローチを探りました。その中の一つが「天職塾」です。

――天職塾とは?
 天職塾は、三宅哲之さんという起業コンサルタントの方が主催する起業支援塾です。先ほどお話しした「ヒト・モノ・カネ」のうち、「ヒト」の軸で考えたときに、コミュニティに参加してたくさんの人から背中を押してもらおうと思いました。そこで商工会のスクールに入ったり、社労士のコミュニティにも入会しました。天職塾は、そんなコミュニティの一つです。
 これにはエピソードがありまして、昨年の2月頃、独立するとは決めたものの、アプローチの仕方もわからず、「本当にこの道でよいのか?」と心の中がモヤモヤしていたんです。そんなとき、たまたま入った書店で三宅さんの書籍『絶対成功 好きなことで起業できる』に出合いました。読み進めていくと、「モヤモヤ」というキーワードが髄所に出てくる。これを見て、「これって、今の自分そのままじゃないか。そうか、俺はモヤモヤしていたんだ!」と、はじめて自分の状態に気づきました。さらに天カフェという、起業を目指す仲間が集まる起業準備塾を開催している。早速体験で参加させていただいて、「これこそ、自分が求めていたコミュニティだ」と直感し、すぐにメンバーになると決めました。
 天カフェには、同じ志をもった仲間がいて、自分に対して本気のフィードバックをしてくれる。これは本当に励みになりました。起業準備が加速していったのはここからです。「モヤモヤ」という言葉で自分を客観視できたときが、独立に向けての本当のスタートだったかもしれません。

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会議室もあります。

支えてくれたすべての方に報いたい

――今後の目標を教えてください。
 これまでに、家族や前職の仲間、起業に向けてのコミュニティ仲間、社労士の先輩たちなど、本当に多くの皆様に支えられてきました。じっさいに独立して、いろいろな人たちの支えがあってここまで来れたと感じています。ですから、これから私がやるべきことは、そんな皆様への恩返し。事業をしっかりと軌道に乗せて、支えてくれた皆様を安心させてあげたい。士業3年と言われますが、何より、とにかく続けること。開業したばかりですので、当然まだ売上はほとんどついていませんが、続けなければ未来はありません。
 私が提供するサービスは、目に見えるものではありません。お客様との信頼関係が何よりも大切になります。「上江さんなら任せて大丈夫」「まずは上江さんに相談しよう」そう言っていただける存在になりたいですね。
 この1年が終わったあと、どんなふうになっているのだろう。5年後、10年後は何をしているのだろう。そんなことを考えると、本当にワクワクします。お客様のため、私をサポートしてくださる皆様のため、上江誠はこれからも誠心誠意、尽くして参ります。皆様、どうぞ、よろしくお願いいたします。

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「どんな小さなことでも、お困りごとがありましたら、ご相談ください」と、上江さん。

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インタビュー:2015年2月4日


【追記】
2月7日(土)、上江さんの開業記念パーティーにご招待いただきました。来場されているゲストの皆様と接していて、本当に多くの方に愛されていると感じました。ご招待いただきありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。上江さんの今後のご活躍に期待しています!

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乾杯!

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歓談中。

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歓談中。

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奥様からのサプライズメッセージに思わず……。

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上江さんのマイブーム、自撮り棒!

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ゲストに事業を説明。

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上江さんが提唱するのは、"会社・職場・本人・家族"を支える「四方よしのメンタルヘルス」。

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クライマックスは歌で大盛り上がり!

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プレゼント贈呈!

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こちらが本当の?プレゼント。

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締めのご挨拶。

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最後は全員で記念撮影!



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